思うことをつらつらと

 熱で寝飛ばしたJudith Halberstam講演会@お茶大だが、こんなことがあったという。
渋谷知美さんのBlog http://shibuya.txt-nifty.com/blog/2004/12/post.html から。)


いい気分で帰ろうとすると、なんと当の男性学者が来ているという。そして、翻訳ができなかった謝罪をしたのち、「なぜ男性の私がJudith さんをお呼びしたか」マイクを手にとうとうと話し始めた。「ボクはフェミニンな男の子なんです」「ボクはカッコいい女の人が好きなんです」といった告白に「別に聞きたくないんだけど!」と心の中で毒づく。
翻訳という重労働を放棄して、おいしいとこだけもってく有り様が、フェミ言説を簒奪する男性学そのものを象徴しているようで、高揚感4割減であった。

 「へえ、そんなことがあったのね」と半分人ごとに思いつつ、「やめてくれよ、頼むから」という身につまされるように感じもする。他人からはこの男性研究者のように見られているのかしら、と思うといたたまれない。
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 ええ、かっこいい女の人好きですし。(まあ引用部分のように、公的な場でいきなりこんなこと公然と口にしたりしませんが。)なんたって、記憶にある最初のアニメは『リボンの騎士』である。*1この男性研究者と知り合いではないので、どういうつもりで彼が「好き」なのかわからないけど、わたしの場合「好き」というのは、あくまでも「『男装の麗人』になりたい」(なれるかよ)というような、「なりたい願望」だけど。
 「フェミニンな男の子」(ほんとに「子」って言ったのかなあ、だとしたら(ry)っていうのもそう思われてるかも知れない。自分では絶対に、決して、never!、そんなこと口にしないけど。「男(の子)」なんて。
 まあだから、そこのところで彼と自分は違うと思ってるので、半分は人ごと。
 つまり、ほかのところでもちょくちょく書いているけど*2性自認については生物学的な性別とあまり正確には一致していない。もっとも、完全に反対の性別として自己認知しているということもないので、TGともカテゴライズしにくいかも知れない。ましてやGIDではない。別段社会的・心理的コンフリクトで悩んでいるということもないので。身体的違和感はないわけではないが強くはない。もっともDSMの症例とか読むとみごとに一致しているが。*3
 しかし、健康上の理由で通訳できないなら、なんでその場にいたんだろ、彼。
 ……まあ、いいか。
 でもまあ、いちばんこたえるのは、「翻訳[ママ]という重労働を放棄して、おいしいとこだけもってく有り様が、フェミ言説を簒奪する男性学そのものを象徴している」というところである。ただでさえ男性は(研究の領域でも)女性を搾取したりさまざまなのに、男性学みたいなものまでがそれをやってしまってどーする、という気がする。わたしは男性学にはコミットできないし、していないが、同じことをしていないとも限らない。
 女性学やフェミニズムの問題提起や知見は、女性だろうと男性だろうときっちり学ぶべきだと思うし、それぞれが自分なりに消化して使いこなしていくべきだと思う。だが、そうするプロセスで、意識しているとしていないとにかかわらず「フェミ言説を簒奪する」ようなことをしてしまう危険性は常につきまとう。とにかく研究者というものは、いい仕事をするということがほぼイコールで自分の業績を作ることであるから、女性学やフェミニズムに学んで何かアウトプットを出し、「恩返し」をしようと思っても、それが「収奪」につながったり、そういう印象を他者に与えることにもなりかねない。
 だからわたしも最初はフェミニズムの領域で仕事をすることをできるだけ避けてきた(翻訳は除く)のだが、まあどこで何やってても同じかとある時点で思って、あまりかたくなには考えないことにするように最近はしている。でも、どこかで後ろめたく思っている自分がいる。せめてずっと後ろめたさだけは忘れないようにしようと思う。
 いろいろほかに書きたいことはあるけど、何を書いても以下言い訳になりそうなのでやめておく。なんだか鬱だ。(ていうか、ちょい頭痛がするというのが正しいか。)

*1:その前に『宇宙少年ソラン』を観ていたらしいのだが、トイレのスリッパがソランとチャッピーだったことと主題歌以外記憶にない。観ていたという記憶すらない。

*2:ジェンダー・身体・セクシュアリティ」、矢澤・玉水編、『社会学のよろこび』、八千代出版、1999年、所収、など。つい先日ここのコメント欄でも書きましたね。(笑)

*3:樫村愛子さんに「一度分析させてください(笑)」と言われたことが。すいません、わたしラカンよくわかりません。って関係ないか。