鈴木芳樹、『スローブログ宣言!』
おもしろかった。いい本です。おすすめ。(本としての作りも良好。)
といっても、誰にとっても全部おもしろく読めるかどうかは不明。わたしがほぼ全編楽しく読めたのは、たぶんインターネットに接してきた履歴が似通っているからでしょう。
yskszkさんは1995年にインターネットに大学からアクセスし始めたと書いていらっしゃいますが、わたしもこの年の4月に就職し、大学からインターネットにアクセスするようになったので、まったく同じ時期ということになります。ただし、電子ネットワークの利用はその2年ほど前から。NIFTY-Serveを利用していました。フォーラムのボードオペとかもやってました。(要するに、アクティブな利用者だったということです。)
研究室に自前・自腹でサーバを立てたのが7月、個人のWebを開設したのが夏から秋ぐらいにかけてでしょうか。コンピュータには「愛称」をつけるもの、と思いこんでいたわたしは、このときサーバに(ry*1
yskszkさんはこの本の中で、「アメリカのBlogと異なる、『個人サイト』文化の延長にあるものとしての日本のBlog」という点をかなり強調しています。これもけっこう波長が合うというか、以前からネットの上でいろいろな個人サイトでお気に入りを見つけて頻繁にアクセスしたりした覚えがある身にとっては、書いてあることがいちいち腑に落ちるというか。
逆に、最近のBlogブームからネットに書くようになりましたとか、初めて自分でアクセスしたのが2ちゃんねるでしたとかいう人は、違った印象を持つかも知れません。
わたしが一番おもしろかったのは、Webに書かれていることの断片化(pp.116-117)と、書いている人へのyskszkさんのこだわり(「人間性」とp.257で書かれていること)、この二つの関係というか、そういうところです。「スロー」であることは後者と親和的なのだと思うけど、Blogのおもしろさというのは前者であり、かつ断片化した内容がトラックバックなんかでつながっていく点だと思うんですよね。そこは「ファスト」な部分なのかも知れないけど、「スロー」な立場からそういう「ファスト」な部分とどうつき合うのかということが、いろいろ書かれている。まあネットはそもそも「ファスト」な存在なんだけど、そういう中であえて「スロー」であるための心構え、みたいなところ。そういうところが「役に立つ」ところかなあと。
たとえばそれが、「文体が内容を決める」「2ちゃんねらーがアクセスしてきた時の心構え」などで、これらはブログを始めた人が実践に活用できる内容なのではないかと思います。だから、実はネット歴が浅い人にとっては、「役に立つ」本なのかも知れません。(まあ、「お役立ち本」という位置づけで書かれてはいないのかも知れませんが。)
Blogにしっかり「スロー風土」を根づかせるためにも、「ファスト風土」とのつきあい方を知らなきゃね、というのは、けっこう大事なことなんじゃないかなと思うのでした。
しかし、最初のほうでインターネットの歴史を振り返っているわけだけど、手際がいいなと感心するとともに、似たようなこと(インターネットで活動するある団体の10年間をインターネットの普及とからめて記述する)を直前までやっていた身としては、枚数に余裕があるっていいわね☆と、軽くシットしてみたくなるのでした。げんこーようし18まいにまとめるってものすごくあくろばてぃっくだったんだな・・・。