ついで。

銀狼の花嫁―魔術師ベルガラス〈1〉 (ハヤカワ文庫FT)

銀狼の花嫁―魔術師ベルガラス〈1〉 (ハヤカワ文庫FT)

 著者名に注目。〈ベルガリアード〉と〈マロリオン〉の2シリーズではデイヴィッド・エディングズだけが著者としてクレジットされていたが、実はシリーズの当初からリーとデイヴィッドの共作だったということが、この本の冒頭のメモで明らかにされている。共著という形にしなかったのは出版社の意向だったとのことだ。
 要するにこれも、女性が書くことを「なかったこと」にするというテクスチュアル・ハラスメント*1の一環と言える、ということだ。著書*2で〈ベルガリアード〉を扱ったときは、話の本筋に関係ないのでそのあたりの事情には触れなかったが、この二人の手になるファンタジーを作品論としてあつかう際には落としてはならないところであろう。
 原著が出版されてこのことが明らかになったときはちょっとショックだった。ジェイムズ・ティプトリーJr.(代表作に『たったひとつの冴えたやりかた*3)やアンドレノートン(代表作に『大宇宙の墓場』*4)は、男性名や男性か女性かわからないような名前でSFを出版しなければならなかった。C.L.ムーア(代表作に『異次元の女王』*5)もそうだったかもしれない。(この3人はいずれも女性。)ファンタジーは比較的女性の書き手が多いが、それでも男性と並び立つときは女性の名前のほうが消えるのだ、と思い知らされたような気分だった。
 もっとも、ポルガラやポレドラの「つっこみ」を読み直してみると、なるほど、と思わされる部分もある。どうぞお二人には、今後はすっきりした形で作品を発表していただきたいと思う。