アジアの家族とジェンダー

 復習というか予習というか。

アジアの家族とジェンダー (双書ジェンダー分析)

アジアの家族とジェンダー (双書ジェンダー分析)

 序章。以下、ちょっくらOCRとか使ってノートを取る助けにしてみました。誤字があったらOCRのせい。(を

  • 対象は「都市中間層」。都市に居住、中等教育以上の教育レベル、管理・専門・事務・一部サービス業などに従事、近代的生活様式や政治意識をもつ。(p.1)
  • 方法的には、社会的ネットワーク論を採用。「人々はそれぞれにユニークな人生を生きるなかで、他の人々と社会的ネットワークを取り結ぶが、そうした社会的ネットワークの一種として「家族」もあると考える(落合 1993*1参照)。このような枠組では家族研究のなかでは「個人単位アプローチ」と言われる。」「社会的ネットワークは、当然のことながら「家族」の内にはとどまらない。」(p.5)家族とそれ以外の社会的ネットワークの相互連関という視点。
  • 「本研究では個人の広げる社会的ネットワークの一部として家族を見る見方を採用する。この方法では,親族もまた社会的ネットワークの一部として,家族と連続的にとらえることができる。」(p.19)

 そういえば、瀬地山さんの『東アジアの家父長制』(勁草書房、1996年)が、けっこう重要な文献として取り上げられているよ。

 ついでに結章。

  • 「中国の伝統では子どもの面倒をみるのは祖父母という規範があり、本来育児は母親がするものという意識は希薄だという。母親を主要なケアの与え手と考える近代ヨーロッパの慣習を前提とした研究枠組への、根底からの挑戦である。」「伝統的に父系制親族システムをもつとされる中国、台湾や、シンガポールの中国系住民においても、育児援助という観点からみると,双方的な親族ネットワークがみられることである。」(p.287)
  • 「わたしたちの調査デザインのなかには、暗黙のうちに親=育児の担い手という前提があったが、それが日本的なバイアスであることが,比較を通して浮かびあがってきた。多くの地域で,親は多様な育児エージェントのなかに埋めこまれているという現象が観察されたのである。」(p.292)

 中国の伝統と直接は関係ありませんが、読んでいて思い出したこと。福島では三世代世帯が多い(他地域と比較して)のですが、福島労働局には「祖父母は育児休暇取れへんの?」(なぜ関西弁)という質問がときどき来るんだそうです。

 以下、「主婦化」について。(追記)

  • 「他方、本調査では予期せぬ発見もあった。それは、子どものケアをめぐるネットワークが充実したタイプ1や2の社会でも、少なからぬ数の主婦に出会ったことである。保育施設不足からやむをえず主婦になるタイ女性が出ているが、本調査はタウンハウス地区で15歳以下の子どもをもつ母親の40%が専業主婦であるという驚くべき事実を明らかにした。また女性の理想的なライフコースとして『結婚し子どもを持ち、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ』というM字型就労を選んだ回答者は62%にのぼった。また中国でも、失業などの理由により、調査対象地区のある団地の40代女性の2割は専業主婦だと言い、他方、やや裕福な階層では教育への関心が高まって、将来、子どもの教育のために専業主婦となる希望をもつ若年女性が増加してきているという。」(p.303)
  • 「『主婦化』のメカニズムには地域を超えた共通性がある。やむをえない事情によって離職した『消極型』とみずから望んで主婦になることを選んだ『積極型』というタイについての区別は(橋本 2003)、地域横断的にも有効と思われる。『状況的契機』による主婦化と『規範的契機』による主婦化との区別もほぼ同じことである(落合・山根他 2004)。これらの区別にも関連して、『主婦化』する原因に注目すると、多くの社会では
     1)失業による主婦化
     2) 育児のための主婦化
     3)教育のための主婦化
    の3つの原因による『主婦化』が見出せるようだ(落合 2005a)。」(p.304)

*1:落合恵美子、「家族の社会的ネットワークと人口学的世代」、落合、『近代家族の曲がり角』、角川書店、2000年、に所収。