吉田本・第V章

地域労働市場と女性就業

地域労働市場と女性就業

 第V章の前半(第2節〜第4節)で書かれていることというのは、要するに繊維産業における技術革新がどのように性別職務分離に影響を与えたか(そして労働力供給がそれにどうからんでいるか)、ということだと思う。気になるのは、じゃあそれを分析することが、どう地理学的なのかというところ。ここがよくわからない。
 後半は宅配便の女性ドライバーの話なのだが、これはすごくおもしろかった。何がおもしろかったって、特にA社がアニマル・キャラクターと女性ドライバーを組み合わせて使って、一般消費者向けに「細やかなサービス」をアピールするというあたり。メディア戦略の中で、大型車ドライバーという「男性職」だったものに、サービス業・販売業的イメージが言説の中で付け加わっていって、次第に「感情労働」の側面が強調されていく。つまり「女性職」のイメージが付与されていく。これはある種性別職務分離の変動が起こる場合の典型的な道筋だろう。(銀行の窓口業務が男性から女性へ替わっていった流れの中で、同じような言説戦略がとられていることがすでに指摘されている。)


 ところでここでいうA社のアニマル・キャラって、黒い猫ですよね。(笑)

 後半で気になったのは、職階の話をするときに、A社で男女ドライバーの職階が異なることと、C社で女性ドライバーが期間社員(繁忙期のアルバイト)に集中しているということで説明して、B社についてはほとんどふれないのに、次のドライバーの時空間行動の話をするときはB社の女性ドライバーの調査で話をしてるんだけど、これってアリなのか。B社の女性ドライバーは全部中途採用という話は出てくるけど、それは必ずしも職階の話ではないし、男性でも中途はいるんだろうし。
 中途だと最初は契約・臨時雇用だということなのだが、ではなぜ女性がそのポジションにとどまるのか、男性はなぜそこから正規雇用にランクアップできるのかというところの説明が抜けてるような気がする。