読了・『ゲームの教科書』

ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)

 著者のお一人、山本貴光さんからいただいた本。
 ゲーム制作ということばで何を思い浮かべるかは、人によってかなり違いそうだ。わたしなどはコンピュータゲームにかなり早い段階から接していて、友人が実際にTL/1やGAMEといった言語で簡単なゲームを作り上げる現場を見ていたりするので、ゲーム制作というとまず「プログラミング」、つまりプログラマ(たち)が、画面とにらめっこしてキーボードを叩いている光景を考えてしまう。
 だが現在のゲーム制作にはプログラマたちばかりでなく、企画立案という立ち上げから、グラフィック、サウンドの製作、プロモート・広報などにいたるまでの多種多様な役割を担う人々がかかわっている。そこには相当な人数、時間と労力(は以前から一緒かも)、お金(給料)が投入されているのである。PS2で「FFX」をやった人は、もう一度エンディングシーン後のスタッフロールを見てほしい。実にさまざまな役割があり、たくさんの人がかかわっているのがわかる。もちろん声優さんたちもいる。
 全体の工程を管理監督する立場の人間の重要性も大きい。また、会社などの組織では、ゲーム制作に直接関わらない経理や雑務担当の人もいるはずだ。
 この本では、ゲーム制作の現場に長年関わったおふたりが、どのような役割をもった人がゲーム開発に関わっているのか、ゲーム開発はどのようなステップを踏んで行われるのか、どのような資質がそこでは要求されるのか、といった「業界について知りたい話」をテンポよく語ってくれる。「開発者の一日」、つまりゲーム業界の人はどんな生活をしているのかについてのコーナーもある。しかしこれだと、食事作ったり洗濯したり掃除したりはできませんな。(9:30出社で22:00退社……。)
 最後には「BL*1ゲーム開発の1ヶ月」。企画からマスターアップまでのフローが具体的に述べられている。
 プリマーシリーズ(新書)なので、ボリューム的にやや物足りない感はあるが、業界について知りたい中学生・高校生には、むしろお手軽なぶん、手にとってもらえやすいだろう。具体的な作品があちこちで例示として引かれているので、あまり退屈もしないはず。

(8)

*1:"Band Life"の略。Boy's Loveではありません。