できんねん*1

・・・き、近年、「近年、」で始まる卒業研究が増えている・・・!(ややこしい)
ついでなので「現在」、「今日(こんにち)」など同じような使われ方をする語の数も数えてみましたが・・・(ちなみにその他の内訳は「最近」、「昨今」、「ここ数年」など)。
類似の語まで含めると、平成20年度には実に卒研全体の1/4が「近年」あるいは類似の語で始まっていると言うことに。
まさにテンプレート。
近年、「近年、」ではじまる卒業研究が増えている

 うちのゼミでは、近年、「近年」禁止です。まず第一に、どのぐらい前からのことかわからないので。って、「お前も『近年』って書いてるじゃないか!」とか言われそうなので、特定しておきましょう。明確に方針を打ち出したのは、4年前です。このへんを参照。
 卒論の中間発表とかでも、レジュメに「近年、」て書いてあると、たいてい「……い・つ・か・ら?(冷」とかイヤミっぽく言われて、その段階でボツ。この点はものすごくシビアです。
 今年度も、最初「近年」て書いていて、「ご相談」の結果、「ここ5年」になった人とかもいたような。
 あと、レポートとか試験でも、「近年」多いですね。
 まあ、たとえばジェンダー問題などを論文やレポートで扱おうとするとき、「状況が現在変化しつつある。」という認識が、学生さんがたにはあって、それが比較的最近生じているというふうに「見える」からなのではないかと思います(ほんとにそうかどうかは別)。最近の研究動向とか、そういうことではなく。
 そのほか「近年」がよろしくないのは、実は「近年」(多くの場合、5〜6年?)のことしか書く本人が知らないとか、日常的な生活感覚でしか語っていない(生活上の実感は大事ですが、それだけでは大学のレポートとしていかがなものか)、「テレビで見た」(メディア分析は重要ですが、たまたまつけたチャンネルを見てた印象だけで語られても)とかそのぐらいである、などということがあるからです。「近年、GIDは徐々に社会で受け入れられているように思う。」とかいうレポートとか授業の感想なんか特にそう。20歳ぐらいの学生さんの場合、社会の中で「問題」として起きていることを記憶しているのは、せいぜい5〜6年ぐらいで、それがレポート等での「近年」の多用につながっているような気もします。
 ゼミで4年前から、というのもこの点と関係があって、それまでいた社会人学生がいなくなった時期(夜間のゼミから昼間のゼミに変わった時期)とほぼ一致します。社会人の場合、もっと実感がある時間の幅が長く、それほど不用意に「近年」とか言っちゃわないところもあったのかも知れません。(なんていってるけど、実はWebで公開しているうちのゼミの論文要旨で、唯一「近年」が書き出しの人は、社会人学生だったりして。ははは。)
 まあそんなこともありますので、「近年」は禁止なのです。自分の実感だけで語るのではなく、実際はどうなのかを調べ、きちんと「いつから」「どうなった」のかを歴史の中で位置づけしつつ、議論しろ、という意味を込めて。(まあ「近年」始まりでも、きちんとそれをやってくれればいいんですけどね。多くの場合、アバウトなので。)