マネー/タッカー、『性の署名』

性の署名―問い直される男と女の意味

性の署名―問い直される男と女の意味

 ブレンダ本の再版*1が出たということなので、まずはこちらにきちんと目を通しておくべきと。
 「ブレンダ」(デイヴィッド・ライマー)はこの本で扱われている中の一つの例。また、その他の例と比較して、年齢的にみてもかなり特異なケースである。他の性別再判定手術を受けた例では、自己の意思を表明できる年齢に達しているが、ライマーの場合は乳児から幼児にかけての段階で再判定手術がおこなわれている。本人の同意がないことはやはり問題が大きいだろう。
 なお、しばしば誤解されることもあるようだが、マネーの主張は次の記述に端的に表現されていると思う。

トランスセクシュアルの人びとに対して)「あなたを男あるいは女に作りあげたものは何だったのだろうか?」と質問してみたならば、それは染色体やホルモン、さらには性器自体によってさえ絶対的に規定されるものではない、という答えがかえってくるだろう。つまり母国語を身につけるときとまったく同様に、“育ち方”という影響を付け加える必要があるわけである。(p.78)