お買いもの:沢山美果子、『性と生殖の近世』

性と生殖の近世

性と生殖の近世

 尊敬する研究者の一人である沢山美果子さんの単著。(7年ぶり?)
 沢山さんとは同じ中内敏夫先生に指導を受けていた*1ということもあるせいなのか、書くものがいちいちすとんすとんと腑に落ちるところがあって、たぶんお書きになったものはほとんど読んでいるはず。
 なお、彼女は福島女子高校(現・橘高校)の卒業生でもある。一度福島大学でもお話ししていただく機会を作りたいとかねがね考えているのだが、未だ果たせていない。
 前著『出産と身体の近世』(勁草書房)では、近世の医学書や人口調整をめぐる藩の史料などを駆使して、当時の民衆、特に女性がどのように自らの身体および「うむ」ということをとらえ、そこに共同体・家族、支配層(藩)がどのように介入しようとしていたのか、そしてその介入にどのような抵抗が行なわれていたのかを描いていた。今回の「性と生殖」という主題も、同じように「うむ」ということ、そして「うむ」身体を扱うということで、基本的には同じ路線の違う場所に位置するといってよい。
 また、もともと沢山さんは近代における子産み・子育ての問題をあつかってきたが、そこからさかのぼって近世をあつかうようになった方でもある。本書も、終章で「近代へ」という問題が扱われているところを見ると、再び近代へ問いを投げ返すような、そういう視点をもって書かれたものであるといえるのだろう。
 おそらく前著と同じく、徹底して史料に忠実に、しかもそこに独自の視点の「読み」を加えて議論が展開されていると思われる。本を開くのが楽しみである。

*1:彼女は「指導教官」というフォーマルな関係はなかったのかも知れないが。この点少し勘違いをしていたかも知れない。