男社会で働く・結末篇

 あまりハッピーエンドではありません。

 トラックバック先にちょっといかがなものかな追加があったので、別エントリとして立てました。話の中身とかそういうことではなくて、それ以前の議論をする態度としての問題なのが残念です。

 以下、引用内での『』でくくられた部分は、トラックバック先でわたしの発言を引用したものです。

『週休2日なら1日あたり10時間の労働時間になります。』*1

これを多いとお思いなら、例えば、夜10時過ぎに製造業系の会社の研究開発部門のあるビルを外から見学してみて下さい。役所の統計に実態があらわれていないことが分かりますよ。てか、裁量労働制取り入れている場合じゃないと、役所やマスコミ等の長時間労働を叩く立場のアンケートに対して、製造業系開発部門で実態の残業時間は書けないでしょ?勿論、正直に書かない方が悪いのですが、書けない状況にあるのを忘れるのはちょっと可哀想というか、調査結果を鵜呑みにしすぎ。

 ……めまいがしました。
 わたしが使ったのは社会生活基本調査の集計データ(の加工品)なのですが、この調査は、基本的に自分が何をしたのかを15分ごとにシートにマークしていく形式を取っています。ものすごく煩雑です。データのぶれはありそうです。サンプリング方式はよくわかりませんが、層化二段階抽出法なのかなと思います。詳しい方教えてください。とにかく企業などを通して回答する方式ではありません。
 たぶん、ここにありのままを「書けない」(書きたくない)と思う人はいると思いますが、内容が個人名付きで職場にバレるわけでなし、データが大きくゆがむほど多くの人が事実と異なる記述をする理由はなんでしょうか。いや、そう判断する理由が「役所やマスコミ等の長時間労働を叩く立場のアンケートに対して、製造業系開発部門で実態の残業時間は書けないでしょ?」というのでは、あまりにも(反対方向に)ナイーブなんではないでしょうか。
 過度に長時間労働しているようにデータを捏造して、長時間労働を告発しようと考える人がいないとなぜいえるのか、とか、あるいはもうちょっとがんばって、長い時間家事とか育児をしているような捏造をなんで彼らはしなかったのでしょうか。実は根っこが正直だったからですか、やっぱり。

 そもそも、「データを出せ」といっておいて、出したら「そのデータは間違っている」と言い、さらにその間違っている理由が「正直に書くはずがない」というのは、どういう態度なのかよくわかりません。いや、これで話が片づくなら楽でいいです。わたしもどこかで使おう。(嘘)

 もう一点。育時連の調査をご覧になった上での発言かと思いますが。

えっと、調査対象の女性の半分以上が旦那の給与に依存している方なんですが、これで意味あるんですか?
更に言えば、43.6%は無職なんだけど、こいつらは旦那に育児はともかく家事負担を要求する権利あるんですかね?(フェイスマーク省略)

 なんで意味がないのかよくわかりません。これは実態として家事や育児がさまざまな階層でどう共有されているかを把握する調査です。専業主婦・パート勤め・フルタイム勤務という妻の就労形態ごとに世帯を分けて、その差を見るという手法はよく取られるところですが、専業主婦を調査対象に含めるのは、なにも彼女たちの夫にそのままの状態で家事をさせたいからではないと思います。また仮に、夫に家事をさせたいという専業主婦の要求がどこかにもしあったとしても、それを育時連が支持しているとかは、どこをどう読めば出てくることなのでしょうか。
 言ってもいないことを勝手に捏造するのはやめた方がいいでしょう。どうもこのあたりは文系・理系とか読解力とか調査リテラシーとかいう以前の問題です。
 重ねていえば、この調査報告の結論を簡単に要約すると「妻の就労形態」、つまりフルタイムで働いているということが、家事・育児共有度を高める一番のポイントだということになっています。つまりかなり単純化していえば、「共働きのススメ」なのです。どこをどうとったらこの結論と、専業主婦の夫にも家事負担を要求するということが結びつくのでしょうか。かなりアクロバティックな芸当だと思います。

 ところで育時連のこの試みなどは、男性が(女性もですが)一枚岩ではないということをなんとか探り出そうというものです。突破口が――個人ではなくて――階層としてあるのではないか、そこがなんとか鍵にならないかという暗中模索です。わたしが、「仕事キツくて家のことができないと思ったら、会社に文句言えば?」と男性に向かって書いたのも、そういう階層が目に見えるようになってほしいからです(思わなきゃしょうがないけど)。だからこそ、ひとまとまりに見られるのがいやなら行動しようよ、「味方」じゃなくて「仲間」になろうよ、というのが、育時連報告書の結論に来ているわけでしょうね。


あと、「こいつら」とか、その他あしざまに専業主婦を見下したようなもの言いや、パート労働者をくさしたりするご発言はやめたほうがよいかと思います。前に書いたように、今その人がパートで働いていたり、専業主婦でいることには、いろいろな理由があります。フルタイムで働きたいのにしょうがなくそうしているのかもしれません。そこに心ないように聞こえる言葉をぶつけられたら、その相手を「味方」だなんて決して思わないでしょうから。

 ということで、これ以上生産的な議論はできないと思ったので、打ち切ります。言いたいこと言ったし。
 さあ今日は田島まで出張だ。2時間半しかねてないよ。orz

■以下はつけたし

 上記トラックバック先エントリのコメント欄にこうあります。

最後にちょっとジェンダー論な方々に嫌味を書いておくと、ジェンダー論な人なのに、何で自分の亭主のことを「旦那」と書くんだろう?
「あなたの主義主張からすると、日本語の使い方間違ってますよ。」と言いたい(笑)。

 これはWords and Phrasesコメント欄でのわたしの発言を指してのことではないと思いますが、念のため、一つ前のコメントから続けて引用しておきます。改行位置のみ一部変更しています。

JosephYoiko 『元村さんもだけど、「余技」という言葉使い方間違ってますよ。揚げ足取りと言われるから書かなかったですけどね(^^;。
それと、家事を分担しない旦那が居ることは認識しておりますよ。
だから、話の発端になったtonbiさんにも、何故旦那さんに抗議しないのか不思議ですと書いたのですが。
元村さんも書かれていたのだけど、女性が男性同様に働き難いのは、「男性だけの問題ですか?」ってのが僕の言いたいことです。
てか、自分から問題提起して、「疲れました」はねえだろうと思うわけです。あとから、肉体的疲労とかとってつけた言い訳されてましたがね。』(2005/11/26 21:13)
june_t 『記者の方のことは、あまりここでこれ以上いろいろ言うのはやめておきます。ところで、問題が違います。「家事を分担しない旦那がいる」のではなくて「そういう夫がほとんどである」です。だって、フルタイム労働者同士で比較しても、両者の差は1日3時間ですよ?
それから、「なぜ旦那に抗議しないのか」ではなくて、「なぜ抗議されても男は態度を改めないのか」ではないでしょうか。(というか「抗議して態度が変わるならとっくに抗議してる」といったほうがいいかも。)女性に責任を押しつけるのはやめておきましょう。わたしはこれらは男性の側の問題であると思います。もちろん、彼個人の人格の問題ということではなくて、彼が受けてきた教育や彼に周囲が期待するものなどの社会的な側面を含みますが。』(2005/11/26 21:47)

 わたしが「旦那」と書いているのはいずれも「」内ですが、それがJosephYoikoさんの「家事を分担しない旦那が居る」「何故旦那さんに抗議しないのか」を引用したものだということは一目瞭然だと思います。ATOKの変換がついてこなかったので、一部わたしなりの表記になっていますが。あと、今気がついたけど、片方は「さん」が抜けていますね。(笑)
 そしてすぐ後ろに続けて、「そういう夫がほとんどである」「なぜ抗議されても男は態度を改めないのか」とわたし自身の言葉で言い換えています。「問題が違う」から言葉そのものから書き直しているわけ。
 こういう文脈で出てきた言葉を、その単語だけ取り上げてあげつらうなら、それはさらにいかがなものかですが、わたしは自分について書いているわけではないので、あてはまらないのだと思っています。(つーか、わたしに「夫」がいるはずないしねー。)

 ……では一体誰が「旦那」とか書いているのかというと、これがよくわからないのですが。関連する元村さんのブログやコメント欄を見ても、女性らしき人が自分の夫のことを「旦那」と書いているのは見あたらないし。ご自分のことを「旦那」といってる方はいらっしゃいますが。ほかの人がほかのところで書いていることだろうか。だとすればあまりに唐突で脈絡がよくわからない。まあいいけど。

*1:なお、現在わたしのこの発言は、「11時間」とより計算値に近い書き方になっています。