いただきもの……というべきか

  • 今井照、「自治体財政の『常識』のうそ」

 ご本人よりいただきました。某機関紙でボツられた原稿だそうです。不謹慎かも知れないけど、おもしろかったです。
 小見出しを抜粋した上で、だいたいの主張をまとめておきます。(まとめの責任はたかはしにあります。)

  • 歴史と資料に学ぶ必要性
    • 「昭和の大合併」(1950〜55年)時には、財政危機があって市町村合併がされたのではなく、市町村合併がなされたからこそ財政危機になった。
    • 今回の「平成の大合併」でも、合併後地方交付税は減る。減るからこそ、時限措置で国は特例加算をするのだが、これは15年後にはなくなる。*1怖いのは、昭和の頃の教訓が忘れ去られていることである。
  • 地方交付税が増加しているのは大都市
    • 「地方の小規模自治体が地方交付税を使って無駄な公共事業をしている」というムードがある。しかし、地方交付税総額中にしめる小規模自治体(人口1万人未満)の割合は12%程度。この中でたとえ2割交付税からの支出を減らしても*2、全体の5%程度にしかならない。その一方で人口50万人以上100万人未満の自治体では、交付金は100%以上増えている。*3
  • 市町村合併による財政効果はほとんどない
    • 市町村合併による削減効果は7000億円と見込まれるが、これは特別会計の1%程度。しかも特例措置が解ける15年後の話である(2020年頃)。さまざまな軋轢を生んでまでやるべきことか。
  • 三位一体改革における数値のマジック
    • 三位一体改革では「4兆円の補助金負担を廃止し、3兆円の財源委譲をする」と言われているが、筆者の計算では7兆円が減額され、措置されたのは2兆円。どうもさまざまな約束が反故にされているふしがある。
  • こうした状況のもと、歴史と資料に学びながら、「時代の要請」を標榜するうそを見抜いて市民自治を確立することが求められているのではないか。

*1:財政危機が今後自治体を襲うかも知れない、ということか。

*2:実際、97年から2003年までで、人口5000人以上1万人未満の自治体では19%交付税が減額されている。

*3:つまり、すでにかなりバランスは修正されているという主張なのか? ここはいまいち不明。あと、規模別の一人あたり金額とかもわからない。