田端泰子、『山内一豊と千代――戦国武士の家族像』

山内一豊と千代―戦国武士の家族像 (岩波新書 新赤版 (974))

山内一豊と千代―戦国武士の家族像 (岩波新書 新赤版 (974))

 まだ読んでいる途中ですが、ちょっと物足りないというか肩すかし。全体の三分の二以上は山内家の系譜と政治史の叙述とに割かれており、家族像(夫婦関係や家族内での妻の位置など)といえる内容は第5章の一部と第6章ぐらい。中世史なのでしょうがないのでしょうが、日々の生活などについての記述はほとんどありません。
 あ、ダメ本ってことじゃないですから。前半部分では史実をていねいに再構成しており、楽しめる本ではないかも知れませんが、内容は充実しています。歴史変動の説明にも無理がなく、納得できると思います。(ただ、家族についての話はほとんど出てこない。)
 難を言えば、「私見では」という書き方をされているところが何か所かあるのですが、なぜそういう「私見」になるのかがよくわからないときがあります。もう少し言葉を重ねてもらえれば、と思いました。