卒論報告会

 毎年やっている卒論報告会。どうしても追い込みにはいるとお互いの話が聞けなくなったり、土壇場の一発逆転(じゃなくて)が伝わらないので、完成してから改めて報告ということでこういう形にしています。もちろん3年生に完成した卒論の内容をきちんと伝えるということと、わたしからの評価を全員に伝えるということも含まれます。(今年は3年生がいないのだけど。)

 提出された卒論は4本。(一つだけ、内定先の会社の研修の都合で、書面での報告になりました。)なお、そのうち概要をわたし個人の本家サイトのほうにPDFでアップします。

■少年誌・ラブコメマンガにみる恋愛構造分析――男性がハマる女性像

 戦後の少年マンガ・少女マンガの展開の中で少年誌に登場してきたラブコメマンガについて、一つの典型として『BOYS BE...』を取り上げて分析。この作品はほぼ全てが各話読み切りの形式ですが、全話のストーリーのパターンを分類して、主流を占めるパターン群の特性を検討しています。
 最後ちょっと本田透の『萌える男』にひっぱられた結論に流れたのが残念。(笑)時間がやや足りなかったかも。

■男性解放ドラマ『アットホーム・ダッド』――悩める現代日本男性に救済を

 タイトルがすごい。(笑)検討されているのは、『クレイマー・クレイマー』『僕と彼女と彼女の生きる道』、そして『アットホーム・ダッド』。いずれも「家庭で家事に責任を持つ男性」が登場するわけですが、妻が家を出ていったからとか、失業したからという理由で仕方なく家事をしている男性だけでなく、家事を担当することに積極的な意味を見いだしている男性が描かれた『アットホーム・ダッド』を中心に、その意味を探っています。
 逆に『アットホーム・ダッド』では専業主婦を悪く描きすぎだったり、働いている女性への視線にバイアスがかかっていたりもするわけですが、そのあたりを他の作品とからめながら、もうちょっと掘り下げて全体を評価できればもっとよかったかと思います。

■ラジオとジェンダー――ラジオから響く女性の声とその役割について

 ジェンダーとマスメディア、というと、テレビか新聞か雑誌の分析が中心。もちろん映画批評や文芸評論もあるわけですが、これはちょっと違った方向。なぜラジオのジェンダー分析がないの?という疑問を出発点に、未開拓の分野に取り組んだ意欲作。1950年代のラジオ放送の改革で現在につながるジェンダー秩序の基礎が形成されたこと、NHKニュースにおける男性アナ・女性アナの分担の分析(こんな面倒なことほかに誰もやらないよね)、ワイド番組の特性の検討などが議論の内容。
 先行研究がほとんどないところでやったにしては上出来。なお、初発の段階でサウンドスケープ論が専門の永幡幸司さん(福島大学共生システム理工学類)のアドバイスをいただきました。ありがとうございました。

■高齢者家族介護とジェンダー――西会津町における聴き取り調査をもとに介護の実態を考える

 一地域で家族介護者への聴き取りをおこない、家事共有度やジェンダー意識と介護との関係を分析しようとしたもの。立場の違いはあっても、主介護者は女性、しかも家事の主担当者であること、ただし家事共有度が高い家族では介護も分担が進んでいるらしいことなどが示唆されました。
 かなりの時間をかけて調査をしているという点では労力がかかっているのですが、そこからあまり多くの結論を導き出せていない感じ。もう少し介護制度との関係などが考察されたり、方法論を意識した議論の組み立てをしてほしかった。もっとも、福祉関係はわたしが弱い領域なので、うまくアドバイスできていないこともあります。