講談社ブルーバックス、2点を回収・絶版へ

 けりがつきそうなので、こっちでも書いておく。

 講談社は9日、同社が刊行した新書「科学史から消された女性たち」と、「早すぎた発見、忘られし論文」(ともに大江秀房氏著)の2点に、他の本や論文から多数の盗用が見つかったとして、回収・絶版にする措置を取ったと発表した。
(中略)
 大江氏はフリーの科学ジャーナリスト。回収・絶版が決まった2点は、いずれも同社の科学新書「ブルーバックス」シリーズとして刊行されている。ともに科学史のエピソードを一般向けに紹介する内容で、計2万9000部を発行。「科学史から消された女性たち」では、盗用が指摘された書籍の著者や訳者の大半が女性研究者だった。
ブルーバックス2点を回収・絶版、盗用発覚

 こことかここですでにWebに出ていた話。
 わたしも『科学史から消された女性たち』が出た時に、「なんでシービンガーと同じ題名?*1」と不思議に思って注文しておいてそのまま放置していたのだが、工作舎の編集者のWeb記事で中身も「同じ」だと知って驚いた。
 手元にある『フェミニズムと科学/技術』(小川眞里子、岩波書店)を開いてみて、ブルーバックス本の17ページから18ページの記述が、ほぼ64-66ページの切り貼りであることが確認できて確信。
 知識の普及のための本だから100%オリジナルである必要はないのだが、参考にしたものはきちんとしめすべきだし、引用の仕方も、これでは単なるコピペに近い。(もし学生のレポートなら即落とすかも。)*2いちおう参考文献に小川さんの著書はあがっているが、もともとなにかに連載されていた段階ではそれもなかったというから、これはもう完全にパクりである。
 すでに20ページあたりで意気阻喪していたのだが、第3章末尾のコラムでサマヴィル(天文学者)が取り上げられているところで最終的に挫折。「しかも彼女は、社会が求めていた“女性として第一に果たすべき仕事や行為”を決しておろそかにすることはなかった。」(p.123)
 ……序章で、ノーベル賞を受賞した女性たちにもこれが求められていたことを書いてたのは、あれは批判ではなかったのか。orz 序章は小川さんの本からパクったから身についてなくて、こういうところで本音が出ちゃったのか、それともこの部分はあまり考えないで書いているのか。いろいろと他の文献との酷似が指摘されている以外にも、こういう気に障る部分がけっこう多くある。盗用とかなくても評価できない。

 ところで、この記事はasahi.com共同通信でも出ているのだが、読売を取り上げたのは最後の部分に目が引かれたから。

科学史から消された女性たち」では、盗用が指摘された書籍の著者や訳者の大半が女性研究者だった。

 記者がわかって書いてるのかな? タイトルに反してこの本、「科学史研究から女性たちを消そうとした本」だったものね。

*1:科学史家のロンダ・シービンガーの著書の邦題が、やはり『科学史から消された女性たち』(工作舎)である。ただし、書名は著作権で保護されない。(でないと「社会学」とか「憲法」とかって本は2度と出せなくなる。)

*2:さすがにレポートではそこまでしないかと思い直したので抹消。もちろん、出所の明示は必須。