この手の思いこみは

 いい加減、どうにかならないものか。

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未妊―「産む」と決められない (生活人新書)

未妊―「産む」と決められない (生活人新書)

工業化以前の世界では(……)多くは一〇代で結婚し、すぐ子を宿した。
(p.11)

 江戸後期、東北地方では平均初婚年齢が低かったようですが、西日本では男女とも20代。近代以前のヨーロッパでも初婚年齢が高い地域がありました。あと、階層差もあるはず。
 なんというか、こういう前提に立たれると、とたんに読むのがつらくなる。
 教科書に書いてないのがいけないのでしょうか。でも教科書に書いてあっても、「東京オリンピックの後で高度経済成長が始まった」とかいう都知事もいますから、それだけではだめなんだろうな。
 文章は読みやすいし、インタビューのまとめかたはすっきりしている。まだ読んでる途中。

■途中経過

 上で文章を評価したけど、読み返してみると、いきなり「Aさん」(p.18)とか出てくるし(爆)、p.19最終行の「しかし」はつながりがおかしいし、やっぱり保留ということで。
 あ、あと、合計特殊出生率が1.57というのはたしかに1989年の数字なんだけど、統計の発表は翌年1990年なので、「一・五七ショック」が1989年だったかのような48ページの記述はおかしい。すげー細かいことだけど、ジャーナリストというのは自分の書く文章にリアリティを持たせるために、こういうところにも気を配るべきなのではないかと思う。

■読了

 電車待ちの時間+αで読了。
 細かいところでいろいろと引っかかることはあるが、おおむね読みやすいし、押さえるべき点は押さえている。
 「東洋vs.西洋」みたいな枠組みはちょっと。そもそもこの枠組みが西洋的な発想なんじゃないかと思うし、さらにポリネシアまでこの枠組みに組み込むのも妙だ。「カーマスートラ」の理解もこれでいいのかどうか疑問(詳しくないのでなんとも言いがたいが)。でもまあこれは、全体から見れば枝葉なのかもしれない。
 この人の歴史のとらえかたや空間的な世界認識は共有できないけど、それでもまあこの本につながったような地道な仕事は評価したいし、形を整える手際もよい。ああ生きろこう生きろというところはそう目立たないし、スルー可能。現実を生きている女性たちが何を考えているかを中心に読んでいけばいい。オニババ本よりずっとまし。という結論で。

■少し補足

 あと本書には、「フェミニストが〜」というような記述が二カ所ぐらいあるけど、これもなんだかなあと思う。たしかにある種のフェミニズムは妊娠・出産に関わる女性の自己決定権を主張してきたわけだが、避妊を求めていたのが全員フェミニストということにはならない。(もちろんこう書くと筆者は「それはわかっている」と言うだろうが、ならなぜわざわざ「フェミニストが」と名指しするのかということである。便利だからだと思うけどね。)日本で大正から昭和初期に産児調整を求めていた人々の運動は、たしかに広い意味ではフェミニズムの中に位置づけられうるだろうが、その視点だけでとらえるとあまりにも文脈を狭くしすぎるのではないだろうか。