シリーズ・今年のこの1冊(1)研究

 いろいろあちこちで「今年の本・ベスト××」を目にしますが、あれこれ分裂しているわたしはなかなか「これ」という本を決められません。というわけで、ナンバー・ワンよりオンリー・ワンということで(違)、「自分にとって、こういう意味でこれが一番」という本を何冊か、あるいは何冊も、セレクトしてみたいと思います。
 なお、あくまでもジェンダーセクシュアリティ関連ということで。
 
 まず、自分の研究にとって一番重要そうだったのはこの1冊。

東アジアの良妻賢母論―創られた伝統 (双書ジェンダー分析)

東アジアの良妻賢母論―創られた伝統 (双書ジェンダー分析)

 「良妻賢母」(あるいは「賢母良妻」「賢妻良母」など)という概念は、日本の伝統的な女性像などではなく明治期以降に作られてきたものだという考えは、1990年代以降すっかり定着した感がありますが、東アジアという枠組みで歴史をとらえたときにどのようなことがいえるのかという視点で、中国・朝鮮・日本という地域における動きを叙述していこうというこの本、(広い意味で)近代日本におけるジェンダー関係はどのように変容してきたのかという問題をあつかっているわたしにとってはなくてはならない知見を提供してくれました。