読了・『セックスという迷路』

セックスという迷路―セクシュアリティ文化の社会学

セックスという迷路―セクシュアリティ文化の社会学

 札幌の自由学校「遊」の連続講座「自分らしい『性』を生きる」(2005年)の記録に、札幌学院大の社会臨床研究会の記録、書き下ろし原稿を加えて構成したオムニバス本。内容は以下。

  • はしがき
  • 第1章 ねえ、本音で「性」のこと話そう――身体的なハンディを超えて(白石耀)
  • 第2章 楽しいセックスの体験が社会を変える――セックス奉仕隊が求められる理由(キム・ミョンガン)
  • 第3章 オンナを楽しく生きる――ラブピースクラブを作ったわけ(北原みのり
  • 第4章 セラピー文化としてのセックス奉仕隊の功罪――奉仕隊員とユーザー女性の聞き取り調査に基づいて(井上芳保)
  • 第5章 若者の性意識は変化している――性教育の実践にみる性的リベラリズムアポリア梶原公子)
  • 第6章 ネットをめぐる人間関係論――ネット恋愛、ネット心中のフィールドワークから(渋井哲也
  • 第7章 セックスワークについて考える――性産業で働く女性たちの労働実態の検討から(川畑智子)
  • 第8章 グローバル化と人身売買――セックスワーク従事の外国籍女性への暴力の実態(越田清和)
  • 第9章 フーコーにおける「セクシュアリティ」と「生-権力」の概念(杉山吉弘)
  • 第10章 日本社会における売買春の変遷――歴史学的視点からの考察(今西一)
  • 終章 性の「解放」の深層にあるもの――自分らしい「性」というより不気味なものと出会う(井上芳保)
  • あとがき

 興味深く読んだのは第4章と第5章。特に第5章では、現在の性教育の課題は、避妊や性感染症の防止よりも、性が介在する人間関係をどのようにコントロールしていくのか、発生する可能性のあるトラブルをどう回避・解消していくかといったことがらであるという認識が示されている(p.181)。避妊方法のノウハウや性感染症予防のテクニックなどは、ある意味「正解」(100%ではないにしても)があるのに対し、人間関係のコントロールやトラブル回避は万能の答えがあるという性質のものではない。だがむしろ、だからこそ教育の場(正課の中かどうかはともかく)であつかうことが必要だということだろうか。

■補足

 ちなみに第2章・第4章で言及されているキム・ミョンガンたちの活動については、こちらも。

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