読了
- 作者: ニコラス・G・カー,村上彩
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 単行本
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原著は、2008年刊。
自動改札機が登場したとき、「利用者に少しずつ労働をさせることでコスト削減を図るのか」と感心した覚えがある(定期券の場合)。つまり、定期券のチェック自体は機械がやっているわけだけど、それまで利用者は、定期入れを駅員の目の前に差し出せばよかったのが、定期券を定期入れから取り出して、改札機に入れて、出てきた券を受け取って、また定期入れにしまう、という「労働」をやることになったわけだ。こういった「労働の強化」を、少しずつわたしたちそれぞれが受け入れたのだ。(切符の場合はあまり変わらないかも知れない。)
それと同じことが現在起こっていると、筆者は指摘する。つまりYouTubeに動画をアップロードする、動画を視聴する、タグをつける、リンクをはる、さらにニコ動ならコメントをつける――こういった行為はすべて利用者が行う。つまりYouTubeでは、視聴はともかく、コンテンツの作成や整理や紹介などをすべて利用者がやってくれる。その「労働」の成果によって、会社は利益(広告収入)を得ているということになる。しかも、YouTubeや広告サイトや出会い系サイトなどのスタッフはごく少数なのである。少数者が大きな富を手にするしくみはこのようなものである。
ところで、インターネットの発達はまた、学生がレポートを書くときの苦労を、他人に代行させることを可能にした。レポートの課題となっている本やテーマについての情報は、分散しながらネットのあちこちにアップロードされている。それらは、それぞれの利用者がちょっとずつ(あるいは時には多くの)苦労をして、本を読んで考え、タイプしたものである。それを学生たちは、マウスさばき一つによってレポートにまとめ……(暴走中)
そしてもう一つ。
同時に、家事の肉体労働が軽減されたことで、多くの女性たちはもはや召し使いや日雇いを使って当然とは思わなくなった。家事は自分でできるし、自分でやるべきだと考えるようになった(そして、かつて召し使いとして働いていた貧しい女性たちは、より給料の高い工場の仕事に移っていった)。*2
なんかこれ、どこかで出てきたようなフレーズw*3
主婦はまた、夫や息子たちの手を借りることができなくなった。男たちは、家事は“楽になった”のだから一生懸命手伝う義務はない、と考えるようになった。ルース・S・コーワンがその著書 "More Work for Mother"で述べたように、中流家庭において「労力節約用の機器のおかげで労働を軽減できたのは主婦ではなく、それまで主婦を手助けしていた人々だった」。*4
ああこれ、テキストに書いたな。(笑)*5
コーワンの本はこれ。
More Work For Mother: The Ironies Of Household Technology From The Open Hearth To The Microwave
- 作者: Ruth Schwartz Cowan
- 出版社/メーカー: Basic Books
- 発売日: 1985/03/11
- メディア: ペーパーバック
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