日本女性生活史・近世

日本女性生活史〈第3巻 近世〉

日本女性生活史〈第3巻 近世〉

 実はなぜか近世の巻だけ持っていなかったので、古書店で購入。
 とりあえず真葛つながりで、桑原恵、「近世的教養文化と女性」だけ読む。でも、あまり真葛のこと書いてなかった。
 近世の女性の著述活動は、一般に受けとめられているよりも、あるいは「女訓書」に書かれているような女性の教養とは異なったかたちで、幅広く展開されており、その作者の多くは、「学者の家に生まれたか、武士の家の生まれで、父から教育を受けたものが多い。」(p.183)という。このあたり、科学史の領域でよく指摘される、ヨーロッパの女性と似たような状況か。
 そのほか、女性が記していた日記についても取り上げている。頼春水の妻梅颸(し)の日記が中心的に検討され、「小梅日記」も付随的に言及されている。近世の農書の一部に、「家政」を担当する家長の日記としての農事記録があるが、これらの女性の日記は、家長に代わる代行者としての妻による、知識人版の家政記録だといいうるという。(pp.193-194)ただし、男性の手による家政記録とは異なり、実際に衣食などにかかわる部分の遂行者もしくは直接の命令者であった女性の記録には、その記録の具体性においてかなりの相違があるようである。(もっとも、幕末期になるが、中瑞雲斎などは家事の細かな点まで熟知していて、記録を残しているらしい。梅干しの漬け方とか。)