読書メモ:McDowell本

Redundant Masculinities?: Employment Change and White Working Class Youth (Antipode Book Series)

Redundant Masculinities?: Employment Change and White Working Class Youth (Antipode Book Series)

 男性性が特定の時・場所でどのように構築されるか、が本書のテーマ。
 1990年代末にイギリスで、義務教育終了直後の男性にインタビュー調査をしている(シェフィールドとケンブリッジで24人に)。それが議論の基盤。以下、イントロダクションでの理論的整理を中心にメモ。
 彼女の研究は、P. Willisの『ハマータウンの野郎ども』と似ているが、当時のように「学校出てすぐ工場労働(非熟練労働)」というパターンは、1999年までにはもう消滅している。現在はサービスセクターでの不安定な雇用が主流。
 なお、Willis自身が語っていることだが、1980年代にはすでに、定職に就いていない男性は、(経済的に)独立した若い女性にとって魅力的でなくなっている。だから「職を失う」ということは、ヘテロセクシュアルな関係への、ひいては結婚や家族生活への道が閉ざされる、ということでもある。
 ところで、サービスセクターでの仕事は、より女性的な特徴に適合的なものと一般には見なされる。そうすると、労働者階級の男性がそれまで構築してきた男性性とは異なるものが求められるということになる。
 サービスセクター(職業領域)でも結婚相手(私的領域)としても排除され、極端な話、生殖技術のせいで生物学的にも不要(redundant)になってしまうので、なかなか男性は現代社会では居場所がないってことになる、というお話。