読了『夢見る水の王国』上巻

夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)

夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)

 昔Macで、ハイパーカードを使った「ゲーム」――というか電子絵本があった。引き出しを開けるとそこから次の世界が始まる。水路を抜けていくと、別の世界が待っている。(わたしがやったのはWindows版)
 この物語は、その「ゲーム」に、ある意味似ている。ひとつのアイテムを登場人物が手にすると、次の節ではそのアイテムの由来が語られる。そして次の節では、別な世界、または別な時間で、先ほどのエピソードと重なるようなできごとがつづられる。
 いくつもの時空の断片をめぐりながら、らせんを描くようにゆっくりとストーリーは進んでゆく。「世界の果て」に名前と一角獣の角を捨てにいく少女「マコ」を、もう一人の少女「ミコ」が追いかける話だ。あるいは、「マコ」が、角を失った一角獣とともに彼女を追跡する「ミコ」の手を逃れながら、「世界の果て」を追い求める話といってもよい。「ミコ」と「マコ」はもとはひとりの少女、「マミコ」だったのだが。
 色彩豊かな情景描写が楽しい。

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