『クレイモア』

 学生さんが以前レポートのネタにしていたので、とりあえずKindleで既刊全部。
 ファンタジーにおける「戦う女性」たちがなぜ戦うのかについては、作品によっていろいろな理由づけがされるのだけど、この作品では、妖魔の身体を埋め込んで、それによって身体能力を高め、特殊な力を発揮できるのは女性だけ(正確には、男性はすぐ暴走するので適さない)と説明されている。彼女たちは「クレイモア」と呼ばれ、その名前のような大剣をたずさえて、各地で妖魔狩りを行っている。
 ところで、たしかにこの作品でも女性が主人公であり、「戦う女性」たちがストーリーの中心にいるのだが、彼女たちを管理している組織は、男性が支配している。また、舞台世界の一般社会についての描写は、それほど深くはなされていないが、クレイモアたちと接点を持つことの多い軍隊や宗教組織は、やはり男性が支配的に描かれている。こういった留保をつけた上で、作品を読んでいく必要はあるだろう。
 ただし、ロールモデルの存在やその他、女性が数の上で多く登場するがゆえの、さまざまな女性同士の関係性の設定がなされており、その意味で、「紅一点」や「男装の麗人」の孤立とは一線を画したストーリーを有している。このあたりは、いわゆる「戦闘美少女」ものを、簡単に低評価できない部分であるだろう。