金子郁容ほか、『eデモクラシーへの挑戦』(岩波書店)

eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み

eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み

 金子さんは一度授業を取ったことがあります。というか、ほかの先生の授業を取ったらその方がご病気で、金子さんに交代したというか。ある日授業に出て行ったら、スニーカーにジーンズという若い院生風の人が出席取ってて、「?」と思ったらそれが金子さんでした。マルコフ連鎖とか教わった覚えがあります。わたしもスニーカーは履かないけど、ジーンズにトレーナーみたいなかっこうで授業やりますが、金子さんの足元にも及びません。(なんて書くのも失礼か。)

 さて、この本は藤沢市の「市民電子会議室」の記録です。どのようにしてこの電子会議室が立ち上げられ、運営され、活用されたかが、いくつもの事例をあげながら紹介されています。
 全体像の紹介であること、市民のボランティアによる市民電子会議室運営委員会・市職員などが執筆者に多く参加していることなどもあって、学術書という位置づけの本ではありません。読みやすい反面、理論的な一般性には欠けるところがあるかも知れません。

 電子会議室の参加者は20代・30代の会社員が多いのだそうです。(p.85)これまで社会的勢力が大きかったのは、都市部では比較的年齢が高い層や自営業層だったかと思うのですが、それとは違う層が行政に対する声をあげやすくなったということなのかも知れません。