総合科目:セクシュアル・ハラスメントへの対応

 今日は労働法が今野順夫さん*1にセクシュアル・ハラスメント(以下S・H)への法的対応ということでお話しいただきました。
 S・Hの概念や労働者・企業側がS・Hをどのように受けとめているか、女性労働者がどのようにS・Hを経験しているかなどについてまず解説。調査では女性労働者の6割が、職場でS・Hを「見られる」「たまに見られる」としています。逆にそれだけ「日常化」してしまっているため、女性労働者はたとえば「男性同士、大声で性的な会話をした」というような項目については、「S・Hの観点から問題と思いますか」という質問に「はい」と答える割合が、企業や男性に比べて低くなっているということもあるようです。*2
 では、S・Hはどのように法律上扱われているか。まず一般的規定としては、改正均等法21条で職場における雇用者の管理責任が「配慮義務」として規定され、1998年に労働省(当時)が事業主に対して配慮すべき点を指針として告示しています。また判例では主に、民法に基づいて判断が行なわれています。一つは民法上の不法行為として認定するもので、加害者本人に対しては民法709条で、また使用者責任としては715条(不法行為の注意義務違反)を根拠に判断されます。また最近では415条の債務不履行責任(職場環境整備・配慮義務)に問うというということがあるようです。
 後者のほうが時効が長い(不法行為は3年、債務不履行は10年)ということと、顧客・第三者によるS・Hは使用者責任を問うことが困難であるのに対して、債務不履行なら追及できるということがあるようです。ただし、債務不履行は債務を尽くしていると判断されることもあります。(その場合は免責)
 あとはS・Hの原因とか、防止対策とかについて比較的一般的な話がありました。
 今野さんはネットにS・Hについての判例一覧をアップしており*3、以前はYahooなどにも登録されていました。ここ4年ぐらい忙しくてどうだったかと思いましたが、今回出講をお願いしたので、この間去年の分まで代表的なものをアップされたようです。(笑)

*1:大学法人の理事(副学長)で「教員」身分がないので「先生」とは呼ばないようにしています……というのは冗談です。

*2:環境型S・Hの一種。この質問に「はい」と答えたのは、企業の63.3%、男性の50.3%、女性の36.3%。

*3:http://www.ipc.fukushima-u.ac.jp/~a012/sexual.html