山下、川浦ほか、『ウェブログの心理学』

ウェブログの心理学

ウェブログの心理学

 さらっと第3章まで全部読んでみた。

はじめに

第1章 インターネット時代のコミュニケーション
 コミュニケーションの公開化と個人化/インターネットのコミュニケーション的特質/ホームページをもつということ/ホームページの読み手であること

第2章 コミュニティに見るウェブログの歴史
 ウェブログ草創期はいつをさすのか/登録型リンク集コミュニティに見るウェブログ草創期とその発展/アンテナ系コミュニティに見るブログ・ツール文化の原型/レンタル・サービル系コミュニティの挑戦/日本発ブログ・ツール系コミュニティが目指すもの/ウェブログ・コミュニティの融合と発展に向けて

第3章 ウェブログ社会心理学
 ウェブ日記の動機と効用/ウェブ日記スパイラル/自己表現とコミュニケーション

第4章 ウェブログの現在と未来
 ウェブログの現在/ウェブログの継続意向に関する社会心理学的研究/ウェブログがインターネット社会にもたらしたもの/コミュニケーション・ツールからソーシャル・ネットワーキングへ/ウェブログブームはどこへ行くのか/おわりに

終章 ウェブログ・個人・社会

附録
 ウェブログの歩き方――ウェブログを楽しく「読む」「書く」「つながる」ためのアドバイス/インターネット・ウェブログ関連年表/ウェブログに関する論文・記事リスト

 第1章、第2章は総論と歴史記述、そのあとに中核であるはずの第3章・第4章が続く。第3章はWeblogという言葉が登場する以前の1997年の調査、第4章は2004年の調査になっている。分析部分の記述はあっさりしており、圧倒されるような迫力は感じられない。(妥当性がないとか不十分だとかいうことではなく。)
 資料としての意味はたいへん大きい。(というか無茶苦茶便利だとさっき再読して思った。)ウェブログについて卒業論文でも書こうという人には便利そう。特に大学生だと10年前のインターネットの状況をほとんど知らないだろうし。短いコメントではあるが、著作権やジャーナリズムとの関連性、マーケティング活動への情報の転用など、いくつかの重要な論点に触れられているのも見逃せない。
 そう考えれば、筆者たちのコンセプトは非常に明解で、「2004年末時点でのウェブログというインターネット・コミュニケーションの姿のスナップショット」を、可能性や問題点も含めて残しておこうというものだと言っていいだろう。調査にしても、ウェブログの中の特異な点(たくさんのアクセスを稼ぐ少数のサイトや、内容面で特異なブログ)について注目するということではなく、あくまでも平均値的な部分に視線を合わせようとしているわけだ。だからこそ、多くの人にとって参考になるはずなのだが。