落合、『近代家族の曲がり角』

 再読。

目次
 
 はしがき
 
 第一章 近代家族をめぐる言説
 第二章 アジア家族の近代
 第三章 失われた家族を求めて
  ――徳川日本家族の実像――
 第四章 社会的ネットワークの変容
  ――人口学的世代と家族――
 第五章 個人を単位とする社会
 第六章 労働力不足時代の家事と主婦
 第七章 ビジュアル・イメージとしての女
  ――戦後女性雑誌が見せる性役割――
 第八章 テレビドラマの家族史
 補 章 家族のゆくえ
 
 あとがき
 初出一覧
 参照文献

 第七章は『日本女性生活史』で読んだ。第一章も岩波の社会学講座で読んでいるはずだが、ちゃんと覚えてないw
 徳川期の福島県内の農村の話が出てくる(二本松藩領仁井田村)。そこが使えそう。(*)ただし、ソースが外国での学会報告のペーパーらしいので、データを見ることができない。

 (*)WOWOWは"'WOmen and WOrk' Workshop"(「女性と労働」ワークショップ)の略なのですが、福島県の女性労働を検討しよう、ということに(いちおう)なっている(らしい)ので。

■コメント

 今回読み直したいと思ったのは、主に第一章の近代家族の定義のところについて、いささか思うところがあったから。

 まず、落合、1985*1、およびそれを載録した落合、1989*2では、近代家族の特徴についての有名な一覧表が出てくる。

1 家内領域と公共領域との分離
2 家族構成員相互の強い情緒的絆
3 子供中心主義
4 男は公共領域・女は家内領域という性別分業
5 家族の集団性の強化
6 社交の衰退とプライバシーの成立
7 非親族の排除
8 核家族

 また、山田昌弘、1994*3では、感情社会学の知見を踏まえて、

1 外の世界から隔離された私的領域
2 家族成員の再生産・生活保障の責任
3 家族成員の感情マネージの責任

が「近代家族の基本的性格」だとされている。

 落合はこれらを前提にして、さらに実証への応用のための「操作化」を意識して、落合、1997*4や本書では

1 女性の主婦化
2 二人っ子化
3 人口学的移行期における核家族

を特徴とする「家族の戦後体制」が戦後日本で成立したと考え、このうち1と2を近代家族のメルクマールとして指標に用いることを提案する。たしかに1の主婦化や2の少子化は数値化しやすい(前者は既婚女性の労働力率、後者は合計特殊出生率を用いることができる)。また、核家族か否かという点も、同居の範囲での確認は容易である。

 ただ、福島などで実際に地域の家族と接したり、統計データを扱ったりしていると、特に1と3については、かなりの程度今でも「当てはまらない」と感じることが多い。講義で落合さんの定義などを紹介すると、それに忠実に照らして「うちの家族は近代家族ではない」(母親はずっと就業しているし、子どもは4人いるし、三世代同居だから)、「福島には近代家族は少ないと思う」と感想や答案に書いてくる学生が、無視できない割合いるのである。
 もちろん、日本全体をマクロなデータを通してみるためには、操作概念化してしまったほうがいいということはわかるのだが。


なんかうまいことやれないものか。

*1:落合恵美子、「近代家族の誕生と終焉」『現代思想』13-6。

*2:落合恵美子、『近代家族とフェミニズム』、勁草書房

*3:山田昌弘、『近代家族のゆくえ』、新曜社

*4:落合恵美子、『21世紀家族へ』(新版)、有斐閣