修論報告会

 昨日・今日と、今年度の修士論文報告会。今回は11人が報告。だんだんプレゼンテーション重視になっていく傾向があり、視覚的にも工夫がこらされ、素人でもわかりやすい報告が増えてきた。個人的にヒットだったのは、土偶の研究。科学史っぽいところもあったり。
 わたしも1本副査を担当していた。香港で長期就労する日本人女性へのインタビュー調査。
 均等法以降の世代の女性たち、特に四大卒の女性たちは、新しい働き方を求めて社会に出て行ったものの、必ずしも自分たちが期待したような評価は得られないことが多かった。そうした状況への対応として、日本社会の中で自らを差別化しようとして、たとえば語学留学をしたり、資格取得を目指したり、大学院へ進学したりという道があったわけだが、もう一つの道として、より自分が正当な評価を得やすいと思われる環境に身を置くというものがあった。それがすなわち、外資系企業への就職であり、海外での就労であったわけだ。(というようなことは、論文には書いてないが、脳内で補完。)
 これまでも西ヨーロッパや北米での調査はあったようだが、香港やシンガポールで働く女性たちについては、それほど蓄積がないらしい。
 そこで、三ヶ月ほどの期間の間に香港で働く三十数名の日本人女性たちにインタビューをして(そのほかに「量的」調査をしているが、あまり有効なものとは思えなかった)、その語りをデータとして検討したものが、副査を担当した修論
 プレゼンではややしくじっていた。マックで作成したパワポのファイルが、プレゼン用に用意されたWindowsマシンで正常に再生されないというアクシデントつき。(自分で持ってきたのは新しい型のマックで、デジタル接続のコネクタしかなかった。)まあそのほかにも、いろいろ。
 取り上げた先行研究が不足気味だったり、ここのところ豊富になってきているアジアの比較研究(女性労働調査や家族研究)などの動向をフォローしていないため、分析に幅が出ていないのが難点だったが、素材は充実しており、文章としても読みやすかった。もう少しじっくり時間をかければ、より完成度の高いものになったと思う。それだけの力量は感じさせてくれた。