総合科目・職場におけるジェンダーと法の問題

 今日は表記の題で、中里見博さん(行政政策学類:憲法学・ジェンダー法学)の講義。法律は素人なので、自分のノート代わりに、講義の順をすごく大まかに追っていきます。
 1985年の男女雇用機会均等法では第2条の理念のところはこうなっています。


第二条(基本的理念)
 女子労働者は経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることにかんがみ、この法律の規定による女子労働者の福祉の増進は、女子労働者が母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営み、及び職業生活と家庭生活との調和を図ることができるようにすることをその本旨とする。
 (http://myriel.jp/data/law/kintou_old.html、改正後はhttp://myriel.jp/data/law/kintou.html
 つまり明らかにこれは女性を対象にした法律であることが明白。正式な法律名も、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」です。
 これに対し、99年の男女共同参画社会基本法では、たとえば

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一 男女共同参画社会の形成 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。
とあるように、両性が対象だということになります。だいぶ違う、ということですね。(http://myriel.jp/data/law/kihon.html
 そもそも日本国憲法ではどうなっているか?というと、第14条の「法の下の平等」が規定されているところで、職業や門地と並んで性別が出てきます。ただしこれは公的領域の平等の規定であるとのこと。女性労働者がなぜ職場で不利に扱われているかというと、そこの理由付けとして「女性は家庭責任の担い手である」という社会的規範があるからですが、そうすると労働におけるジェンダーの問題は一つ労働の領域にとどまるのではなく、家庭におけるジェンダー関係にも及ばざるを得ない。だから憲法で言えばこの条文だけではだめで、第24条の家庭における両性の平等(第2項では両性の本質的平等が規定されています)の規定をセットで考えていかないと、ということになる、のだそうな。
 確かに憲法のこの2つの規定を合わせて表裏一体をなすもの、としてとらえるような視点は、これまで馴染みはなかったような……わたしだけか。
 ここまでがイントロで(イントロしかちゃんと聴いてなかったかも)、次から戦後日本における雇用の平等をめぐる展開を歴史的にたどる話になります。
 1966年の住友セメント事件。結婚退職制度・若年退職制度をめぐる問題で、たとえば女性だけ35歳停年が定められているとかは法的に問題ありという判決が東京地裁で出たもの。結局労働法(労働基準法等)には規定されていないので、これら女性を不利に扱う慣行は、民法90条公序良俗違反から憲法へさかのぼって14条に反するというかたちのアクロバティックな不法行為認定をするということになる(このへん微妙にメモが間違ってるかも)、というのだそうな。素人のわたしが「アクロバティックやな〜」と思ったぐらいですからきっとそうなのでしょう。
 このへんからメモの密度が下がりまくりですが、85年の均等法は79年に発効した女性差別撤廃条約http://myriel.jp/data/law/sabetsu.html)を批准する*1ために、日本がいくつかの国内法整備をしなければならなかった*2ときに、勤労婦人福祉法(だったかな)を大幅に変えて作ったようなところがあるとかで、男女の平等ではなくて最初に書いたような女性の地位向上という視点でできているのはしょうがないのかなというところもありそう。
 97年の改正均等法でも、法律の名称としては「女子労働者の」うんぬんは取れますが、やはり片面性*3はまぬがれていないもよう。このときに旧法で問題だった、紛争解決が困難だとかセクシュアル・ハラスメントの問題が放置されてるとかというところに手当てがされてるのだけど、まだまだ実際には、というところでしょうか。あとはまあ、やはりジェンダーの問題は女性側だけを見ていてはだめで、男性の働き方の問題とか、それと合わせて家庭責任の問題とかというところをきちんと考えていかなければならないでしょう。
 今後の課題としてはいくつかあるけど、間接差別の問題などがあるとのこと。これは詳しく書き出すときりがないのでやめときます。(学生の皆さんはレポートで取り組んでください。)
 いろいろ整理して知れてよかったです。いやあ、法律の講義って法社会学(堀部政男、渡辺洋三)と法思想史(だれだっけ、勝田教授?)と杉原泰雄の比較憲法しか聴いたことないし。現行法については、条文はともかく解釈等は何も知らないも同然っす。勉強になりました。総合科目はやめられない。(笑)

*1:日本は85年に批准。

*2:つまりは外圧。しかし、外圧でもなければ社会的公正を貫徹できないなんてのは、外圧に屈するよりよっぽど恥辱であるという認識は世に生まれないものか?

*3:ずっと「かためんせい」、だと思ってました。「へんめんせい」だとか。